アジアの風に恋をして
入院
バンコクの病院に入院した。三泊四日の左足の腫れの治療のためだった。
某日、なんとなく左足の親指のつけね部分近くに腫れぼったい異常を感じた。恒例の朝のジョッギングをしたが痛さはなかった。が、腫れの感じは同じだった。歩くのにはさほど影響がなかったし、その内に治まるだろうと軽い気持でいた。
翌日はゴルフコンペがあった。開始直前まで激しい雨だった。水はけの良くないことで有名なそのゴルフ場は、一面芝が水をたっぷり含んでいた。プレー途中、腫れを感じていたが、左足をひきずるような事態ではなかった。ホール終了の際には、靴下が水でグッショリだった。その夜は、更に赤味を増して腫れが大きくなっていた。痛みがあったが、疲れもあり眠ることはできた。
翌朝月曜日。腫れは膨らみを増し歩くのに引きずる状態と痛みが加わった。リンパ腺が腫れているのがわかった。「やっぱり病院かな!」。恐れていた悪化の症状だった。一人でツカツカと歩ける状態でなかったので、秘書に病院へ同行してもらった。
日本で勉強した女医さんは、ばい菌がどういう菌か見ためではわからないといい、「通院でもいいけれど足を安静にしておくことが、一番大事。数日間入院して抗生剤の点滴をした方が回復が速いですよ」と言った。それで、短期に治したかったので即入院を〃決意〃した。先生からも看護婦さんからも、「ジョッギングといい、ゴルフといい、悪くさせたね」と言われたが、後の祭りであった。
個室を与えられた一泊の入院費と食事代は、一流ホテルの宿泊費と同じ位の料金であった。思わぬ出費となった。が、早くよくするためには、しかたがなかった。
テレビ、冷蔵庫、ソファ、机、椅子それにシャワー・トイレ付きの七畳位の大きさの病室は、快適ではあった。左足及びリンパ腺の症状の悪さを除いて、手や上半身は問題なかった。これならコンピューターでもベッド脇にあったらある程度仕事ができるのに、と思ったりもした。が、入院初日には、熱が出はじめテレビを見る気持ちも起こらずベッドに身をしずめる〃患者らしい患者〃となった。
朝、昼、夜の配膳食は、決して美味しいとはいえなかった。国が違っても〃病院食〃は、敬遠されがちな味付けになるのかも。だが、驚いたことは、三時と七時に〃おやつ〃が出てくることであった。例えば、菓子パンとジュース缶とかである。配膳係は、看護婦さんの白衣とは違った明るい草色のユニフォーム。なんだか機内にいるようでスチュワーデスがデリバリーしているような錯覚を覚えた。日本人の入院患者は多いようだ。先生は、日本語で問題なしだし入れ替わり立ち代わり見える看護婦さんも〃病状用語〃は、日本語でOK。しかも、目があえばタイ女性特有のスマイル。だから、精神的に楽であった。
私の今回の入院するはめとなった原因は、明確ではない。が、時々履いた皮サンダルで左足が少しすれていて、そこにばい菌が入ったものと私は思う。とにかく、三日間、動くことなく安静にして定時に運ばれる薬を飲み、抗生剤の点滴を受け回復をじっと待ったことで四日目に退院できた。看護婦さんの微笑みと日本の医学を学んだ二人の先生の的確な処置で五日目からは仕事ができた。タイの病院なかなかですぞ!
(OVTAタイ事務所所長) 開原 紘
|