アジアの風に恋をして

ビ ニ 本


 「ビニ本」、と聞いただけで思わずツバをごくっとする人は、多分四十代後半以上の男性だろう。「ビニ本」は、言わずもがな、きわどいポルノまがいの写真集を透かしのビニールで密封し書店で販売したものである。なぜ四十代後半以上と書いたのかは、「ビニ本」がここ四、五年余りマスコミではほぼ〃死語〃の扱いに近いからで、「ビニ本」の意味を理解できる世代は、限られてきている。そして、私の五十代世代にとっても懐かしの〃下ネタ用語〃になっているからである。

 さて、この「ビニ本」が、当地バンコクでは今が盛りのごとく日系書店を始め街中の本屋で見られる。おっと、早まっては困る。「ビニ本」と言っても、ポルノ系のそれではない。高価な本や日本から空輸の最新号雑誌類にビニール袋で封されたそれである。

 書店に山ほどある各種書籍の中で、「ビニ本」でガードされた本は、なにかそれだけで「買わないで見たらダメ!」とばかりに異様に置かれて見える。

 私は、ぶらっと日系書店を中心に立ち寄る。タイ人の学生やビジネスマン、OLといった人々が、日本語の雑誌も手にし見ている。主にファッション系の雑誌やタレント紹介集、車やオーディオといった趣味系の物、それに漫画の類を多く見ている。ここで、私は、タイ人の巧妙な「ビニ本」の見方を知った。つまり、密封されたビニールを開きその場で見るのである。「ビニ本」になってない本もいっしょくたに置かれているので、開いて見ている分には、「ビニ本」のものかどうかはわかりにくい。あとは、むかれて下に置かれた透明ビニールの哀れな(?)なれの果て。こうなると、「ビニ本」用のビニールの役目はなく単なるゴミの類になる。

 さてさて、観察を続けよう。見終わった〃元「ビニ本」〃はどうなるか―。

 ある人は、丁寧にもとのさや、否もとのビニールに入れて定位置に置く。またある人は、そのままにしてサヨナラ。このタイプにやられると、もう「ビニ本」でなくなってしまう。次にこれを手にした人は、ラッキー。

 日本では、ポルノ系専門書店の売り物と一般書店でのタレント・ヌード集を除いてまずビニールで〃保護〃され売られている書物は今ではないと思う。どうだろうか、「ビニ本」の密封VS開封のいたちごっこよりも現在の日本の書店のように即中身を開けるようにしたのが、ビニールにかけるてまひまが省ける上、日本を知りたいと思うタイ人にもある面でありがたがられるのでは、と書店側の営業サイドを無視した思いが、時々日系書店を覗く度に頭をよぎるのである・・・。  

(OVTAタイ事務所所長)開原 紘


[BANGKOK SHUHO]