電気も切られロウソクで暮らす日々
二枚の遺書に綴られた夫への思い
夫に捨てられ絶望した女性が服毒死
今月十一日午前七時、都内ノーンケーム警察に、ペットカセーム通りにあるアパート『コンドー・リムナーム』の一室で女性が自殺した、との通報が管理人から入った。
事件が起きたのは、八階建てアパートの三階三〇九号室。
警察が現場に到着すると、管理人が合鍵を使ってドアを開けた。部屋の中に入ると、ドアのすぐ内側でアーチャポーンさん(愛称プー/二二)が倒れて死亡していた。
死体は、半袖の赤いTシャツに黒のジャージ姿で、口から沢山の泡を吹き、両手は上に上げられ、激しくもがき苦しんだ様子がうかがえた。息絶える直前にかなり暴れたのか、周囲に置かれている物が取り散らかされていた。
ベッドの脇には緑色の液体の入ったコップが置かれており、殺虫剤のような匂いが漂っていた。
警察は、アーチャポーンさんは、その液体を飲んで自殺したものと推察。
また、室内からは、アーチャポーンさんの自筆と思われる二枚の遺書も発見された。
遺書には、解決出来ない自分の運命に行き詰まった結果、死を選ぶまでの様子がめんめんと綴られていた。内容は次の通りである。
アーチャポーンさんは、ノーンケーム区にあるモダン・フレームという会社の工場で働いていた時、同じ工場の製造メンテナンス課に勤めるアヌワットさん(二四)と出会い付き合うようになった。そして三年前に、彼女の両親の反対を押し切って結婚。その後息子のスタットちゃんが生まれた。現在、スタットちゃんはスリン県の実家に預けて面倒を見てもらっている。
結婚当時、死ぬまで一緒に幸せも苦労も分かち合おうと誓った夫が、三年目位からだんだん冷たくなり、家にもあまり帰らなくなった。そのうち、夫はチャンヤーという女性と深い関係になり、それまでは生活費や息子の養育費をどうにか払ってくれていたのが、それも滞るようになった。アーチャポーンさんは悲しくて毎晩泣いた。
そして、再び妊娠三ヶ月と分かった時、さらに悲しく苦しくなり、工場を辞めて家に居ることに決めた。夫が自分の元に戻ってくれるだろうと微かに期待して・・・・。
しかし、結果は悲惨的だった。夫はそんな妻の気持ちも無視し、家にも全く寄り付かなくなってしまった。
一人ぼっちになり、水道代や電気代、家賃も払えなくなり、最後は電気も切られロウソクの灯りで暮らす日々が続いた。もう人生に失望し、スリンの実家に戻りたいと思ったが、夫との結婚に反対していた両親に対し、恥ずかしくて合わす顔が無いのでとうとう家には戻れなかった。もう苦しくつらい人生と闘う力も無くなり死ぬことに決めた。子供のことは、大学まで面倒みて欲しいと、夫にお願いしたい。そして、自分が死んだら出家して供養して欲しいと訴えた。
警察は、部屋の中を調べた結果、アーチャポーンさんの死は自殺である事を確認。その後、夫のアヌワットさんに事情聴取を行った。
アパートの警備員アムダーさん(三五)の証言によると、昨夜部屋の前を通り掛かった時、中から「助けて・・・」とすすり泣くような声が聞こえたが、始めは気にも留めなかったという。しかし、その部屋が電気を停められている事を思い出し、もう一度注意深く中の様子をうかがったが、そのうち静かになったという。
アムダーさんはその様子から異常な事態を感じたが、鍵がなかったので何も出来ず、朝になり管理人から合鍵を借りて部屋に入ったところ、既に死亡していたアーチャポーンさんを発見したとのことである。
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