愛車と共に行方不明の大学生
山中に死体で発見

犯人は被害者の友人とその仲間五人
カンボジアへ流す盗難車マフィアの陰も


   タイで身の安全を保証する事は至難の業なのか。

先日、愛車のシヴィックに乗ったまま行方不明となっていた大学一年生の青年が、殺害され山中に捨てられていたという事件が起きた。

先月二十三日、ライトブルーのホンダ・シヴィックに乗って自宅を出たABAC大学一年生のアーユワットさん(一八)は、午後の授業に出た後消息を断った。

 授業終了後家に電話を入れた後、行方不明となった息子を心配した、母親で都の過密集合住宅地管理部の副部長であるソーパナーさん(四三)は、バーンチャン警察に息子の捜索願いを出した。なぜならば、アーユワットさんは真面目な性格で、親に連絡を取らずに何日も家に帰らないという事は不自然だと判断したからである。

その後警察が捜査を続けた結果、アーユワットさんは既に殺害されていた事が明らかになった。

今月九日午後三時半、警察はチャイラット(二八)、マナット(二四)、ルンティワー(二二)、ウィライ(三五)、そしてジャムロン(三五)の五人の容疑者を審問本部に連れて行き、証拠物件として押収したピストル一丁、二フィートのシャベル、被害者のキーホルダー、車番プレート二枚と共にマスコミに発表した。

「今回容疑者を逮捕できたのは、被害者アユワットさんの両親から綿密な聞き取り調査を行った結果である。アユワットさんが行方不明となる直前に、母親の車を借りて、北サムローンにあるインペリアル・デパートに自動車を見に行った。その時被害者の友人であり、今回の事件の容疑者の一人でもあるマナットも一緒に見に行っていた事が判明した。警察がプラプラデーンにあるマナットの宿泊場所を捜査に行った時は不在だった。しかし、警察はマナットの出身地であるプリラムまで捜査の手を伸ばし、今回のアーユワットさんの行方不明と関係があると推察した。さらに今月四日、被害者の母親の元に、ある男から電話が有り、息子の身代金として五万バーツを要求、バンコク銀行プリラム支店のウィライ名義の口座に金を振り込むよう指示した。その後の警察の追跡調査により、間もなく五人の容疑者逮捕に成功した」

 ブンチュアイという男が、容疑者達から預かったとして、盗まれたアーユワットさんの車を警察に引き渡したが、この男の身元はまだ分かっていない。

供述によると、五人の容疑者達は、被害者であるABACの大学生を殺害した後、ナコンラーチャシマー県スーンサーン郡カオペーンマー山中に死体を埋めたとしているため、警察は容疑者全員を山に連れて行き現場検証を行ったところ、アーユワットさんはABACの制服を来たままの姿で土に埋められていた。左脇腹をピストルで撃たれ、頭部は強く何度も叩かれたらしく陥没していた。死体は既に腐乱が進んでいる状態で、死体遺棄現場付近では異臭が鼻をついた。

 グループの親分格のチャイラットは、盗んだ車をカンボジア国境に持って行き売り捌く商売をしており、シーサケット県プーシン郡では名の知れた存在だという。

県内に住むある〃先生〃からホンダ・シヴィックの注文を受けたチャイラットは、自動車エンジン修理工である弟のマナットに連絡を取った。そこでマナットが、シヴィックに乗っている知り合いのアーユワットさんから地方へ遊びに行こうと誘われている事を話すと、チャイラットは直ぐに計画を立てた。

そして、事件の起こった先月二十三日、アーユワットさんをマナットと一緒に遊びに行かせ、途中で兄であるチャイラットと、現在指名手配中である仲間のタオを紹介させた。そして夜はカオヤイへ遊びに行くよう勧め、一方ではジャムロンにカオヤイ近くのカオペンマー山で待ち伏せるよう指示していた。

 事件当日の夜十一時頃、アーユワットとマナットがカオペンマー山麓に到着すると、マナットは「皆で山の上まで登って、ヤー・バーを買いに行こう!」と誘った。

 殺害現場となった場所までたどり着き休憩をとっている時、悪魔と化したジャムロンは、疲れて座り込んでいるアーユワットさんの左腹部に向けて突然ピストルを発砲。苦しみもがきながら友人のマナットに助けを求めるアーユワットさんの頭部を、マナットはシャベルで何度も強く叩いた。さらに他の者も一緒になって、アユワットさんがグッタリと息絶えるまで棒で強く叩いたという。

アーユワットさんの死を確認した後、マナットらは持っていたシャベルで穴を掘り死体を埋めた。その後はバラバラに逃げ去ったという。チャイラットは、カンボジアへ売るためにシヴィックを注文した先生の元へアーユワットさんの車を届けた。

翌日、ウィライとルンティワーは、殺したアーユワットの両親を騙すために、急いで銀行に口座を開いたようだ。

警察の発表が行われている最中、アーユワットさんの父親で、タイ農民銀行シーロム支店のマネージャーであるソンポンさん(五〇)が姿を現し、容疑者達を睨み付けた。特に息子の友人であると思っていたマナットの顔を睨んだ時のソンポンさんは、裏切られたという思いから悔しさと無念さと怒りで震えていた。そして「お前の心は何をするためにあるのか!?どうして友達である息子をそこまで叩き付ける事が出来たのか!?息子はお前を何度も家でご馳走しているじゃないか!なのに、どうしてそんなヒドイ事が出来るのか!?」と怒鳴り出したため、警察の発表の妨げになるという理由から、警察はソンポンさんの気持ちを落ち着かせるために外に連れ出すという場面も見られた。

そこでマスコミは、外で待つソンポンさんにインタビューを申し出た。

 ソンポンさんは、「息子のアーユワットは長男でした。とても勤勉で夜遊びなんかしたことは有りませんでした。車が大好きでいつもあちこちいじってました。エンジン修理工のマナットとはそんな関係で知り合ったのです。マナットはよく家にも出入りしていました。ある時、マナットが失業したからと言って、息子が彼の仕事の世話を頼んできたこともありました。まさか、友達と思っていた男に息子を殺されるなんて想像もしませんでした。今回犯人逮捕に当たって、警察はよく捜査をしてくれたと思っています。犯人全員を死刑にしてほしいです!!」と怒りも露に訴えた。

 その後、盗まれたアーユワットさんの車は、シーサケットの先生に僅か六万バーツで売られていた事が判明された。

 また、犯人達はアーユワットさん殺害直後、平然とその先生宅で一ダース入りビールの箱を八箱も飲んでいた事も分かった。

警察では、今回の事件の発端ともなった、チャイラットに車の注文を出したシーサケットの〃先生〃と言う人物に関しても今後調査を進めるとしている。


[BANGKOK SHUHO]