タクシー内に500万バーツの忘れ物

拾い主は30万バーツの礼金を辞退し各基金へ寄付


 今月二十七日午後一時、ラチャダーピセーク通りのレストランを経営する『ビッグ・ドーム・エンターテイメント』社長であるソーサッブさん(四〇)は、ラマ三世通りとサトーン通り交差点辺りにあるアカーンソンクロー銀行トゥンマハーメーク支店からクローントーイに行くため、ローイエット県出身のスントーンさんという運転手が運転するタクシーに乗り込んだ。

 途中、ソーサッブさんは運転席の後側に中型のカバンが置かれている事に気付いた。カバンを取り出し開けてみたソーサッブさんは仰天した。カバンの中には一〇〇〇バーツ札と五〇〇バーツ札の束が沢山入っていたからである。ソーサッブさんはスントーンさんと相談し、落し主に戻すために警察に届ける事に決めた。

 二人は最初トゥンマーハーメーク警察に届けようとしたが、警察からはカバンが発見された場所が管轄地区ではないとの理由から、ヤンナワー警察に行くよう言われた。

 そこで、ソーサッブさんはヴパワディー・ランジット通りのシノ・ブリッジ・ビルに入っている『ルアム・ドゥアイ・チュアイ・ガン(協力して助け合いましょう)』という番組を制作しているラジオ局に出向き、落し主に番組を通して呼びかけてもらうことにした。

 ちょうどその頃、五〇〇万バーツ入りカバンをタクシーに置き忘れた落し主のパタナポンさん(四七)も『ルアム・ドゥアイ・・・・』の担当者に電話を入れていた。内容は、屋根がブロンズ色でボディーが赤色のタクシーに五〇〇万バーツの入ったカバンを置き忘れたので、発見者は届け出て欲しいというものであった。車のナンバーは覚えていなかった。

パタナポンさんは、番組担当者から一様ディンデーン警察に紛失届けを出すよう勧められたので、ディンデーン警察に赴き調書をお願いした。

 パタナポンさんは、今回の出来事に関して次のように語った。

 「私はバーングンティアン区で建築の下請けの仕事をしています。昨今の不況の煽りを受けて運転資金が足りなったため、弟のスチャーイに金を借りに行きました。弟から、十一月二十七日付けの五〇〇万バーツの小切手を受取った後、小切手を現金化するために、その足でタイ農民銀行のサトーン支店に行き、五〇〇バーツ紙幣で四〇〇万バーツ、一〇〇〇バーツ紙幣で一〇〇万バーツ、合計五〇〇万バーツの札束を受取りました。札束を入れたカバンを抱え、私は銀行前でタクシーを拾いアカーンソンクロー銀行近くにある弟の家まで行きました。タクシーの中ではカバンを運転席の後側に置きました。弟の家に到着した時、私は急いで降りたため、うっかり運転席後に置いたカバンを忘れてしまったのです。タクシーが走り去った直後、私はカバンを置き忘れた事実に気付き、慌てて弟を呼び、車でそのタクシーを探し回ったのですが見つかりませんでした。私は僅かな希望をかけて、トゥンマハーメーク警察に届けを出し、『ウアム・ドゥアイ・・・』の番組とチョー・ソー・ローイ(FM一〇〇)に事情を説明し、呼びかけてもらうよう依頼したのです。ちょうどその直後に、カバンが見つかったという知らせを受けて本当に嬉しかったです」

警察は、タイ農民銀行サトーン支店の窓口職員ノッパドンさんに連絡し、小切手裏面のサインの照合と、小切手がパタナポンさんの弟のスチャーイさんの口座から落ちた事を確認。その後、警察は集まった関係者や報道陣の前で五〇〇万バーツ揃っていることを証明し持ち主に返した。

パタナポンさんは、ソーサッブさんにお礼として三〇万バーツを渡した。しかしソーサッブさんはそれを辞退し、代りにマスコミ協会に一〇万バーツ、チャイパッターナー基金に一〇万バーツ、貧しい子供達の援助基金に八万バーツ、そして残りの二万バーツをタクシー運転手のスントーンさんに渡した。

 ソーサッブさんは、「最初、カバンの中の大金を見た時ビックリし、もうそれ以上は見ないようにしました。なぜなら、大金を全部見てしまうと自分に欲が出る事を恐れたからです。私は直ぐにカバンを閉めて、スントーン運転手と相談し、トゥンマハーメーク警察に届けようとしましたが、ヤンナワー警察へ行くよう言われたので、ラジオ番組の『ルアム・ドゥアイ・・・』に届けて持ち主を探し出す方が早いと判断しました。お礼を辞退した理由は、昔田舎に旅行に行った時、四、七〇〇バーツの入った財布をすられた事があり、その時金額は少額ながら家族は大変不便を感じた経験があるからです。だから、お金を紛失した人の困っている気持ちが良く分かるので、カバンを早く持ち主に返して上げたかっただけなのです」と落し主の気持ちに立って懸命に捜したかった胸中を語った。

 タクシー運転手のスントーンさんは、「私は何か物を紛失したら、持ち主はさぞかし困っているだろうと思うので、見付けたら直ぐに持ち主に返したいと思っています。携帯電話やカバンなどの忘れ物はよくあります」と不注意な客が多い事を指摘。

 一方、幸運にも置き忘れた五〇〇万バーツが手元に戻ったパタナポンさんは、「五〇〇万バーツの入ったカバンをタクシーに置き忘れた事に気付いた時には手足が震えるほどのショックを受けました。弟とカバンを捜しに出掛けた時も憂鬱な暗い気持ちで一杯でした。なぜならば、建築資材の代金と職人の手当てをすぐに払わないとならなかったからです。今の世の中でも、こんな良い人達が存在する事が分かって本当に嬉しいです。大金なので誰かが見付けたら、もう戻って来ないと思っていました。本当に有難うございました」と喜びを隠せない表情で語った。


[BANGKOK SHUHO]