三角関係、親子関係、就職問題・・・
十一月十九日木曜日、それぞれの悩みを抱えて死に急ぐ人々
今月十九日午後六時半、ノンタブリー県警察に、市内リアップクローン・プラッパー通りにある池で入水自殺をした人がいる、という通報が入った。
警察が駆け付けると、池の周りには大勢の住人達がが集まり、沈んだ死体を捜している最中だった。その中には今回の入水自殺を目撃し警察に通報した、池の近くに住むノーイさんという女性の姿も見られた。
警察はある関連基金に連絡し、池の中を照らす特殊なスポットライトと発電機を持って来てもらい、ようやく池全体がハッキリ見える状態になった。
その後、七人のダイバーが十ライはある池の中に潜り死体捜査を開始。約二時間経過後、死体は今だ発見できなかったため、翌日水面に浮き上がる事を期待してその日の捜査は打ち切られた。
警察は目撃者であるノーイさんに事情聴取を行った。
「私はもう何年も前からこの池の近くに住んでいます。十年程前は、池の土を掘って売る仕事をしていました。この池も掘り続けたために水深十メートルにもなったのです。最近は住人が魚を獲る場所になりました。事件が起こる前、知人で果物の行商をしている男性チャローンさんが、魚を獲るので浮き輪を貸してほしいと言って来ました。彼は、これまでも時々浮き輪を借りに来ていたので、私は何の疑問もなく浮き輪を貸しました。その後、チャローンさんは池の淵に立ち、水面に浮き輪を置き、サロン一枚だけの姿で浮き輪に腰を乗せて、両手で水をかいて池の中央に向かって進んで行くのが見えました。そして、池の中央に着いた時、思いがけない事が起こったのです。チャローンさんは持っていたナイフで浮き輪を突き刺し始めたのです。浮き輪は見る見るうちに萎み、チャローンさんはそのまま水中に沈んで行きました。私はもうビックリして、近所の人を呼び助けを求めましたが間に合わず、チャローンさんの姿は水中に消えて行ったのです。ある人は直ぐに池に入りチャローンさんを捜しましたが浮き輪だけしか発見出来ませんでした」
警察がノーイさんの証言を聴取している時、突然一人の女性が現れ、次のように話し出した。
「私はワンラパーといい、年は三十才です。ノンタブリー県の出身で、現在はクィッティアオ工場で働いています。亡くなったチャローンさんの妻の一人です。事件前、私とチャローンさんは彼の本妻の事が原因で言い争いをしました。その時彼はとても悲しんでいました。なぜなら、彼の本妻に私との関係がバレて、起こった奥さんはローイエット県の実家に帰ってしまったからです。彼は死ぬ前に手紙を書きました。内容は、〃自分のやった事に対してとても反省している。しかし、私は二人とも愛している〃というものです。彼はその手紙を書いた後私にも見せましたが、私は無視してその手紙をごみ箱に捨ててしまいました。その後、彼から魚を獲りに行こうと誘われてここまで一緒に来たのですが、池に着くとノーイさんに浮き輪を借りに行ったので、私は仕事に戻る為先に帰りました。それからしばらくして、彼が自殺した話を聞き、とても驚きました。たぶん、三角関係の問題から逃げるために死を選んだのだと思います」
同日午後三時半、バンコク都内パーシーチャラン警察に、ペットカセーム通りにあるフューチャー・パーク・バーンケー支店四階駐車場から一人の男性が飛び降り自殺を計った、との通報が入った。男性は重傷を負い、パヤタイ三病院に運ばれたとのことであった。
男性の名前はスティワットさん(二六)。バンコク都内ラーチャブラナー区の出身。
警察が病院に駆け付けた時には、スティワットさんは両腕脚を骨折し、頭部陥没と内臓破裂で既に危険な状態だった。しかし、スティワットさんは苦しみながらも最後の力を振り絞り、消えそうな声で「母親に電話して知らせて欲しい・・・」と警察に伝え、電話番号を言い終わるや否や息を引き取った。
警察は、スティワットさんの母親ポーンラットさん(六一)に連絡し悲報を伝えた。
悲しみの中、病院に駆け付けたポーンラットさんは、「息子はサイアム大学を卒業しましたが、いまだに仕事が見つからず無職の状態でした。息子はその事に深く悩み、とうとう軽い精神病になってしまったのです。精神病専門のソムデード・チャオプラヤー病院にも三ヶ月程入院して、最近家に帰ったばかりでしたのに。二日前、息子はトンブリーのウォンウェンヤイに床屋の見習いに行くので金をくれ、と要求してきました。それからまだ二日しか経っていないのに、こんな悲しい知らせが届くなんて・・・・」と涙乍らに語った。
同日午後四時四十五分、バンコク都内パヤタイ警察に、プラトゥーナム郵便局向かいの五階建て建物から一人の男性が飛び降り自殺した、との通報が入った。
警察が現場に赴くと、飛び降りた人の姿は既に無く、一面に広がる血の海だけが残っていた。
負傷者は、飛び降りた直後警察病院に運ばれたが、間もなく死亡したとの ことであった。
所持品の中のIDカードから、死亡者の名前はペットさん、年齢二十歳、ガンペンペット県出身であることが分かった。服装は黒いTシャツにジーンズ。首を骨折していた。他の所持品は、シリラート病院の保険証二枚と現金十バーツだけだった。
警察が建物の中で作業をしていた職人の一人スッチャイさん(四一)に話を聞いたところ、
「我々は朝八時からここで仕事をしていますが、亡くなった男性が道路をフラフラ歩いているのを見ました。事件前、その男性が勝手に建物の中に入って来たので、〃誰に会いに来たのか〃と尋ねたところ、彼は、〃親戚に会いに来た〃と答え、サッサと四階に上がり、そのまま窓から飛び降りてしまったのです」
飛び降りた窓の下に、ペットさんが履いていたサンダルが残されており、警察は自殺した原因を調べるため、親戚を集めて更に詳しく事情聴取を行うとしている。
同日午後七時、サムットプラカーン県バーンプリー警察に、オラワンさんという女性から通報が入り、自分の家の四階屋上から弟が飛び降りようとしているので助けに来て欲しい、と訴えた。
警察が通報のあった家に駆け付けると、屋上でエカチャイさん(二七)が酔っ払って足取りもフラフラした状態で歩いていた。
警察は優しい声で、時間をかけて、エカチャイさんの説得に勤めた結果、しばらくして、ようやく一階に降りて来た。
姉のオラワンさんの話では、「家業は『ゴーチャラン・ヨンモーターサイ』というバイクの販売会社を営んでいます。商売は上手くいっていますので、特に金銭的な問題も有りません。弟のエカチャイは、五年前にも建物から飛び降りたことがあり、その時は幸い背中の骨を折っただけで済みました。今回の事件が起こる前、弟は自分が酒を飲むことに対して母親が口うるさい、と私にグチを言いました。その後、弟は母親と言い争いを始め、突然母親に向かって〃もう死んでやる!!〃と言い残し屋上に駆け上がって行ったのです」とのことであった。
警察は、エカチャイさんの酔いが醒め、気持ちが落ち着くのを待ち、家族に今後充分な注意を払うよう言い渡し、家に帰した。
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