あの世に旅立てない悲しい母心

無念の事故死を遂げた母親が、深夜幽霊となり我が子にジョーク(粥)を


 今月八日、プラチュアッブキリカーン県ペットカセーム通りで、ルン・スリヤーという有名なルークトゥン(タイの演歌)の歌手のバック・ダンサー数名が自動車事故で死亡した件で、このバック・ダンサー・グループのオーナーはサムットサコーン県パンターイノーラシン寺院で葬儀を行い、同時にルン・スリヤーは、亡くなったダンサー達の遺族に対し香典を渡した。

 その後、この事故で亡くなったバック・ダンサーの一人であるドゥアンサモーンさんの家で、生まれたばかりの娘に、死んだ母親がジョークを作って食べさせた、という噂が村中に広がった。

 この噂を聞きつけたマスコミは、今月十二日、ラーブリー県バーンポーン市内にあるドゥアンサモーンさんの夫、グラーさんの実家に取材に訪れた。

 マスコミが尋ねた時は、丁度ドゥアンサモーンさんの葬儀が県内ジョンブン郡にあるタラート・クワーイ寺(別名/ワーピースッタワー寺院)で行われていたため、マスコミは寺院に向かった。

 寺院に到着すると、リケー(タイの大衆演劇)の役者であるグラーさんと一人娘の一才になるティティマーちゃん(愛称/プイペーン)、そしてグラーさんの姉のチャンさん(四九)の三人が悲しみに打ちひしがれていた。

 グラーさんはマスコミのインタビューに対し次のように語り始めた。

「ドゥアンサモーンと結婚し、娘のティティマーが生まれました。現在は母親が亡くなったため、姉の元に預けて面倒を見てもらっています。妻の葬儀は我々の身分相応に行われましたが、沢山の親戚縁者が参列してくれました。ところが、十一日の夜中に信じられない出来事が起こったのです。その日葬式が終った後、私は自宅に戻り床に着きました。あれは午前二時頃でしょうか、突然お線香の匂いを強く感じて目が覚めたのです。その時は、死んだ妻が私のことを心配して訪ねてきてくれたのだろうと思い、私は〃もう心配しないで、あの世に行って安らかにお休み下さい〃と祈りました。祈り終った途端、お線香の匂いはスッと消えたのです」

 グラーさんはここまで話し終えると、思い出しても恐くなるという様子で震えながら話を続けた。

 「朝になり、姉が娘を連れて訪ねて来ました。そして姉は私に、昨夜起こった不思議な出来事について話し出しました。きのうの夜中零時頃、ティティマーちゃんと一緒に寝ていた姉は、台所の方から聞こえるゴトゴトする音で眼が覚めると、同時にお線香の匂いが漂って来たそうです。その後姉は死んだように深い眠りに入ったということです。朝、台所を見に行った姉はショックで動けなくなりました。台所の床には茶碗にジョークが少しだけ残った状態、つまりジョークを食べ終わった直後のような状態で、茶碗とティースプーンが放置されていたそうです。姉は家族全員に、誰かジョークを買って来た者が居るかどうか確かめましたが、誰も居ませんでした。その時姉は、事故で亡くなった弟の嫁が、生まれて間も無い娘のティティマーちゃんの身を案じて、空腹でひもじくないか心配になり、母乳の代わりに娘の好物のジョークを作り食べさせたのではないか、と思ったそうです」

 横で弟の話を聞いていたチャンさんは、その時の事を思い出しブルブル震えながらマスコミに向かって「本当に起こった事なのです」と強調した。


[BANGKOK SHUHO]