溺愛する娘の恋人に不満が爆発
低学歴、軍隊脱走、ヤク中・・・

相手の男性を射殺し父親自らも命を絶つ


止めに入った娘も重体

 今月四日午前十一時、バンコク都内ブッカロー警察に、トンブリー区ソーイ・ソムデード・プラチャオ・タクシン一八にある賃貸の建物で射殺事件が起きたとの通報が入った。

 警察が現場である半分コンクリート、半分は木造の二階建て建物に駆け付けると、一階出入り口から中に入った所で、その家の主人であるゲーヒムさん(五〇)が血だらけになって倒れて死亡していた。

 青いチェック柄のシャツの中にTシャツを着て、黒い長ズボンを履いたゲーヒムさんの頭部右側は、右手でピストルを持ち自ら発砲したと思われる穴が空き激しく破損されており、血と脳みそが辺り一面に飛び散っていた。

 死体の側には、二十二口径のピストルが落ちていた。ピストルの中には銃弾が一発だけ残っており、八発が使用されていた。警察は、証拠物件としてそのピストルを押収した。

家の中にはゲーヒムさんの死体のみならず、二階に上がる階段上にもう一人の男性、アナンタチャイさん(二七)の死体が発見された。

アナンタチャイさんは、白いポロシャツにジーンズ姿で階段の最上段に血だらけになって倒れており、二階に逃げようとしたところを撃たれたものと思われ、足に一発、そして頭頂部を至近距離から撃たれ即死と推察された。

その後、警察は三発の薬莢と、壁に当たった数発の銃弾を発見。

 この二人の男性の死体の他に、既にソムデード・プラ・ピンガーオ病院(別名:タハーン・ルア病院)に運ばれた負傷者が居た。

 負傷者は、ゲーヒムさんの娘、ルディーさん(二五)。ルディーさんは胸部中央を撃たれ、銃弾は肺を貫通しており重体。集中治療室に運ばれたルディーさんは、医師達から必死の救命処置を施されていた。

 ゲーヒムさんの妻であり、ルディーさんの母親であるドゥアンパモーンさん(四八)は、ショックで放心状態に陥りながら娘の治療を見守っていた。

警察は、ドゥアンパモーンさんの精神状態が落ち着くのを待ち、事情聴取を行った。

 「全てはゲーヒムの短気な性格が原因で今回の事件が起こりました。夫は建築の委託業を請け負っておりました。何十年も前から今の場所に住んでいました。娘のルディーと三人家族で何の問題もなく幸せに暮らしていました。しかし、アナンタチャイ(ソーイの中での通称:ウアン・ローイペット)が娘と付き合うようになってから問題が絶えないようになりました。なぜならば、夫は娘を溺愛するあまり、独占欲が強く、娘にはアナンタチャイのような学歴も低く、他人に迷惑をかけたり、薬に手を出すような男とは付き合って欲しくないと思っていたからです。夫は二人の仲を裂く為に全力を注ぎました。娘には彼とはもう付き合うなと強く命じ、アナンタチャイにもこの家に入るなと警告していたのです。しかし、二人の強い愛の絆を断ち切る事は簡単ではありませんでした。四年前の一九九四年、アナンタチャイが軍事訓練所から脱走する事件が起こりました。また、薬物に関係したことが原因で刑務所に入り、娘との関係は一時的には離れました。しかし、アナンタチャイが今年の四月に出所してからは、再び娘に近づき、とうとう家から連れ出して一緒に暮らしはじめたのです。夫は悔しさと怒りで爆発しそうでした。それは、まさに髭を抜かれるような心の痛みだったのです。しかし、しばらくして娘は反省し家に戻って来たので、夫は娘を許し、もう二度とアナンタチャイには会わないように誓わせました。にも関わらず、二人の関係は切れてはいなかったのです。ゲーヒムが仕事で外出している間を狙って、娘とアナンタチャイは密かに会っていたのです。事件が起きる前、アナンタチャイは夫が出掛けたと思い込み、こっそり娘に会いに来ました。そこで偶然にも夫と鉢合わせになったのです。二人は激しい喧嘩を始めました。恋人と父親の凄まじい喧嘩に耐え兼ねた娘は、外に出掛けましたが、家で射殺事件が起きた事を近所の人から知らされて急いで戻ってきたのです。家に入ると、ゲーヒムが二階に逃げようと階段を駆け上るアナンタチャイを追いかけ、彼の足に発砲したところでした。父親を止めようとした娘も、誤って撃たれてしまいました。ゲーヒムはアナンタチャイの頭を撃ち抜いた後、自らも頭を撃ち自殺したのです」


[BANGKOK SHUHO]