権力を悪用しない誠実な人柄は「警察官の鑑」と評判

副業は路上の靴修理屋さん


 一般にタイの警察官に対する評判は厳しい。時には〃警官の制服を着た泥棒〃とまで言われることもある。

 しかし、そんなマイナス・イメージばかりではなく、中には仕事熱心で思いやりのある警察官も居る。悪事のために権力を利用することなく、金のために薬物取り引きの大物にへつらうこともしない。制服にプライドを持ち、名前を汚さないように日々任務を全うし、薄給にもかかわらず家族のために勤務時間外を利用してアルバイトに励んでいる警察官も少なくない。今の世の中こういった人はなかなか居るものではないので、警察官のあるべき姿のお手本となるのではないだろうか。

 一人の真面目な警察官は、アルバイトとして靴の修理屋を営んでいる。人々からの特別な尊敬は得られないが、誇りを持って働いている。住民からも多くの支持を得ており、修理を頼みに来る客が後を絶たないという。

 タイラット紙スパンブリー支局は、先月二十七日、ウートーン郡のウートーン市場で靴修理のアルバイトをしている警官が居るという情報をキャッチした。

 マスコミが噂の市場に出向くと、市場近くのサーンチャオポー・プラヤーチャック(民間信仰の神が祀ってある祠)脇の路上で、警察官の制服ズボンと靴姿の男性が男性用と女性用の靴を一生懸命修理しているところだった。

 その男性は、時々顔を上げては道路を行き交う人々に笑い掛け、そして又靴の修理に没頭する。爽やかで気持ちよい笑顔に心が和む。

 男性の名前はチャロームさん(三一)。ウートーン警察のバイク・パトロールを担当する警察伍長だ。

 マスコミは、こんな路上で靴の修理をする理由をインタビューした。

 チャロームさんは穏やかな笑顔で質問に応じた。

「家族の面倒を見る責任があるからです。妻のブンチャローン、そして二人の子供、娘のジュリポーン(七)と息子のタナポーン(一)が私の家族です。靴の修理を始める前、妻は洗濯の仕事をしており、一ヶ月に四、〇〇〇〜五、〇〇〇バーツの収入を得ていました。しかし、下の子が生まれてからは、子供の世話に時間を取られて仕事をする時間が減ってしまったのです。収入も減り、一ヶ月に二、〇〇〇バーツしか入らなくなりました。収入が激減した上、折からの不景気で、家族のための生活費が足りなくなりました。そこで、私は妻を助けるための〃栄養剤〃を捜さなければならなくなったのです。警察官の収入だけでは少ないので、最終的に私が靴の修理をすることになりました。以前から少しは知識が有ったので選びました。勤務時間の空いている時に、路上の木の下の木陰に道具を持ち込み修理屋を始めたわけです。どんな型の靴でも修理出来ますよ。二ヶ月程前に始めて、常連客も大分増えました。一日二〇〇〜三〇〇バーツの収入になるので、生活費も足りるようになりました。警察官という立場を利用して悪い道に迷い込むこともありません。私は国民にとって、正しい人として尊敬される警察官にならなければいけないと思っています」

 チャロームさんは続けて人生観を語った。

「私は友人や他人が自分のことをどう見るかということを気にしません。私の家族は農民出身で、昔から金持ちではありませんでした。靴の修理という仕事は、医者とか先生のようには人々からの尊敬は有りませんが、技術も身に付くし、家族の面倒も見られます。誰からも借金する必要も有りません。また、妻の一日の仕事と洗濯というハードな労働を緩和することも出来ます。私は靴の修理で得る収入に誇りを持ち、キャリアを積むことにも役立っています」

 チャロームさんの直接の上司にあたる、ウートーン警察のソーポン警察大尉は、チャロームさんの生きる姿勢に対し次のようなコメントを送った。

「良いことだと思います。応援したいですね。チャローム伍長は優れた経歴を持っており、これまで一度もミスを侵したことが有りません。国家警察事務局からパトロール隊の中で一等賞を貰ったこともあり、また、ウートーン警察は地方七地区の交番の中で一番に選ばれました。なぜならば、部下達が一生懸命任務を果たしているからです。この一人の警察官のお陰で、恥をかくような事は一度も起きていません」

 チャローム警察伍長の靴修理のアルバイトは、副収入を得る手段として他の警察官にとっても良いモデルになることであろう。そしてこの事は誉められる事であり、サポートするべき事であろう。


[BANGKOK SHUHO]