「タイラット紙」記者、衝撃の体験ルポ

噂の売春夜行列車
〃ノンカイ・カフェー〃の実体に迫る!!


 タイ国内を走る汽車の中で密かに売春が行われている事実を殆どの人は知らないだろう。たとえ、その事を目的として汽車に乗り込んでも、運が無ければ、又は機会に恵まれなければ、必ずしも経験できるものでもない。

 「汽車の中で売春が行われているらしい」という噂を聞きつけたが、いったい何時、どの汽車に乗れば・・・・という確実な情報を得ることは難しい。そこで、タイラット紙の記者A氏は噂の実体を確かめるべく、自ら汽車に乗り込むことになった。

   *            *

 先月二十七日夜九時二十分、バンコク都内サムセーン駅に到着したフアランポーン駅発ノンカイ駅行きの急行寝台車に乗り込む。一等車(コンパートメント)の一室、二十四番下段が私の座席だった。幸い上段の二十三番の席には誰も座っていない。個室には私一人という、今回の取材にとっては最高の条件となった。

 サムセーン駅を出発し、しばらくすると、食堂車のボーイが飲物と食事の注文を取りに来た。その後ベッドを準備する担当者がやって来て手早く心地よい寝床を整え、最後に切符をチェックする車掌が各席を廻り、ようやく眠りに入る準備が完了した。

 深夜十一時に食堂車がクローズした頃を見計らい、こっそりとボーイを呼び出し、食堂車の裏側で酒を振る舞いながらいろいろ話を聞き出すことにした。五杯目の酒が空になる頃には、お互いの間に親しみを感じる関係が成立し、ボーイの口からポロポロと〃秘密の話〃が漏れてきた。

 私は、ボーイに「この汽車の中で、本当に売春が行われているのか?」と単刀直入に聞いてみたところ、「ピー(お兄さん)、本当に女が欲しいですか?本気なら私が歩いて探して来ますよ」という答えが。そしてその言葉が終わるや否や、ボーイはその場から飛び出すと少しして胸元が深く開いたTシャツにジーンズ姿の色白の女性を連れて戻ってきた。その女性を隣りに座らせ、ボーイの手に百バーツ紙幣を二枚握らせると、ボーイは「あとはお二人で話し合って下さいね」と言い残しその場から消えた。実に〃職務〃をわきまえたボーイである。

 女性はタイ中央部出身で、名前はソム(二〇/仮名)という。ソムは、「ピー(お兄さん)、私は短時間のお付き合い?それとも一泊?もし短時間だけなら六〇〇バーツ、ノンカイまでのお泊まりなら九〇〇バーツよ」と打診してきた。その質問には答えないでいると、彼女は、「お兄さん、この値段は高くないわよ。私はここに来るまでに、ボーイにチップを払い、車掌やベッドを準備する人にもお金を渡し、車内警察官にも口止め料を払わないとならないのよ。私に入るお金はほんの少しよ」と、この商売を車内で行うために数々の難関を越えなければならない事情を話してくれた。

 彼女から出来るだけ多くの話を聞き出すために、私は長い時間一緒に居られるお泊まりの方を選んだ。

 甘い時間を共に過ごした後、ソムとは親しみのある会話が出来るようになっていた。

 彼女が数百キロに及ぶ線路上での〃非凡な人生〃を選ぶ前は、靴の組立工場で働くという平凡な人生を歩んでいた。

 「去年、おりからの不況で工場を首になったの。親には心配かけたくないので、故郷に帰る気にもなれなかった。以前ある男と一緒に暮らしたことがあったから、もう男性経験はあったわ。失業した後、これから何をして生きていけばいいのか考え悩んでいた時、たまたま乗った汽車の中で一人の男性に声をかけられたの。そのままその男性のベッドで一夜を過ごした後、お金と電話番号を渡されたわ。その時、このお金は自分で稼いだものであることに気付いたの。そして、こういう生き方もあるんだ、と思い、それからこの仕事を続けているのよ」

 「汽車に乗る人々は身分もタイプも様々。私の仕事は、あまり混んでいない車両に乗ってくる人の中から、良さそうな人、お金を持っていそうな人を探して目で合図を送ってからその人の前に座り、〃フゥ〜、ローン(暑いわぁ)!〃とか言いながら肌を見せるような仕草をして誘ったりするの。ある時は、自分で車内の通路を歩いて捜したり、大きな駅で女好きそうな人を見つけて目で誘うと大抵の場合成功するわ」

 汽車がウドンタニー駅に到着する前に、ソムは寝入っている私を起こして最後の情報をくれた。

 「お兄さん、帰りの汽車では気分転換に食堂車のウエィトレスとも経験してみない?ノンカイからバンコク行き急行寝台車の奇数の車両に乗って、ナーン(仮名)という子を呼んでみて。ゼッタイに失望させないわ」と囁くと、ソムはベッドから離れウドンタニー駅で降りた。

 翌日二十九日の夜七時、ノンカイ駅からバンコク行き急行寝台車が出発した。行きと同じく一等車に入った私は、食事とビールを注文し、食堂のボーイにチップを渡しながら何気なく「ナーンという名前のウエィトレスは居るか?」と聞いてみた。しばらくして、ボーイは一人の女性を連れて戻ってきた。

 ナーンとたわいのない会話を交わすうちに、事情を察した彼女は打ち合わせを始めた。

 「ブアヤイ駅に着く前に又ここに戻って来るわ。」ナーンはそう言い残すと席を立ち歩いて行った。

 夜中の零時頃、ナーンは約束通り再び現れた。行きと同様、密室での甘美なひとときを過ごした後、ナーンは「今夜はラッキーね。、もしコンケンとウドンから沢山の人が乗り込んできて満席状態になったら、こんな事出来ないもの。でも、万一混雑している時はトイレの中でも出来るの。それがイヤだったら、二等車か三等車の中で空いているベッドを探して、カーテンを閉めてやればいいのよ。ただし、この場合は両隣の寝台で寝ている客が気付いて騒がないように息をひそめて急いでやらないとならないから大変でしょ」と囁いた。

 ブアヤイからバンコクまでの間の付き合いで、ナーンは千二百バーツを要求した。彼女がウエィトレスとしての本業から得る収入と比べると、この値段は高くもないが安くもないという。

 列車内のウエィトレスには基本給は無く、乗客に売った食事と飲物の料金の一〇%が収入となる。昔は一ヶ月三千〜四千バーツの収入があったが、経済が落ち込んでからは月二千〜二千五百バーツしか入らない。この金額では、洗濯代としても足りないくらいだという。そんな理由から、ナーンと彼女の友達は、車内売春というサイドビジネスを始めることになった。そういう現実から考えると、車内では売春以外にもまだまだ知られていない〃秘密の商売〃が行われている可能性が高い。

 今回、一等車の十二番下段ベッドに座った一人の男性と食堂車のウエィトレス、ナーンの短いラブ・ストーリーは、サラブリー駅到着前で幕を閉じた。ナーンは、「ちょっとお化粧を直してくるわ・・・」と言い残して他の車両に消えて行った。

     * 

 イサーン行き夜行列車の噂は、今回記者自らの体験で全て明らかになった。

 あとは、北部行きと南部行き列車の〃謎〃に迫ってみるとするか。


[BANGKOK SHUHO]

| HOME | バックナンバー | 購読のご案内 |